学生インタビュー

妖怪と本と漫画に囲まれて

妖怪と本と漫画に囲まれて

H.Fさん

Personal Data

在籍学科

リベラルアーツ学科

出身高校

和歌山県立きのくに青雲高等学校

憧れの人物

水木しげる

よく遊ぶ場所

本屋

おすすめの映画、 テレビ番組

モンスターズ・インク、 ジュラシック・パーク

好きなブランド

特にこだわりなし

アルバイトの職種

学内のスチューデントアシスタント

1ヵ月のバイト代

3,000円程度

妖怪画の裏に見え隠れするストーリーを見つけることに、
研究や学問の面白さを感じます。

作成した4コマ漫画

ゼミで妖怪や妖怪画を取り上げているそうですね。

“かまいたち”や“ぬらりひょん”など、一度は耳にしたことがあるかと思いますが、そういった妖怪を多く描いた江戸時代の浮世絵師、鳥山石燕(とりやま せきえん)をテーマに研究発表しました。もともと妖怪が好きだったので、鳥山石燕の作品は知っていましたが、本格的に調べてみると裏側に隠された時代背景など、1枚の絵からいろいろなことが読み解けるんですよ。例えば、「姑獲鳥(うぶめ)」という絵。これは、赤子を抱いて川の中に立つ女の妖怪が描かれているものです。姑獲鳥は「この子をおぶれ」と話しかけてくる妖怪で、子どもを産んだときに命を落とした女性の無念と言われています。今でも出産は大変なことですが、この絵や姑獲鳥のエピソードは、昔の出産がどれほど危険で命がけのことだったかということを感じさせますよね。そんな絵が物語る時代背景を理解できるようになるのが研究の醍醐味です。他にも、猫の妖怪「化け猫」は、人間を食べてその人になり替わるとされていて、狸や狐はそんな化け方をしないのに、なぜ猫だけこんな猟奇的な描かれ方をするのだろうと不思議に思って研究テーマにしてみました。いろんな文献にあたった結果、おそらく猫は人間の近くにいる一方で、犬と違って気ままに過ごすし、人が見ていてもお構いなしにネズミや鳥を狩っているし、人間にとって何か得体の知れない怖さがあったのではないか、その恐怖が猫を恐ろしい妖怪にしてしまったのではないかと結論づけ、レポートにしました。妖怪画の裏に見え隠れするストーリーを自分なりに見つけられることに、研究や学問の面白さを感じます。

いつ頃から、何がきっかけで妖怪や妖怪画に 興味を持ったのですか?

きっかけは、小学校低学年の時にテレビで観たアニメの「ゲゲゲの鬼太郎」でしょうか。すごくハマって観ていたのですが、中学生になる前に突然放送が終わってしまって。親からも、「もう中学生なんだからアニメを観るのをやめたら」と言われ、一度は鬼太郎を忘れようと試みたのですが、無理でした。鬼太郎の世界に触れられないのが悲しくて、過去のシリーズのアニメをDVDで観るようになり、アニメだけでは飽き足らず、原作のマンガも読むようになり、逆にどんどん興味が広がっていってしまいました。アニメは1960年代後半の1期目のシリーズから順を追って観ていたのですが、出てくる妖怪に変化もありますし、同じ鬼太郎でも性格や人間との距離の置き方が少しずつ違っていて、おもしろいんです。

その当時は、なんとなく違うなって思っただけでしたが、ゼミで妖怪画の時代背景を考察するようになり、その違いがはっきりとわかってきました。初期の頃はかなり鬼太郎が妖怪っぽく描かれているのに、バブルの影響があったのか80年代半ばはヒーロー路線、バブルがはじけた90年代後半は達観した感じで、私がリアルタイムで観ていた2000年代になると、どことなくイケメン方向に。鬼太郎に限らず、妖怪退治のやり方も時代を反映したようなところがあって、自分なりに解明したうえで改めて比べながら観てみると、とても新鮮でしたね。

鬼のイラスト

帝塚山学院大学に進学したのも、実は妖怪の話が 決め手だったとか。

オープンキャンパスで、福島理子先生のゼミの説明を聞いていたら妖怪の話が出て、まさか妖怪を真剣に学問する人が水木しげる以外にいるなんて! と、衝撃を受けたんです。日本文学の延長線上ですけれど、妖怪について学べる福島ゼミに入りたくて入学しました。そして、希望通り福島ゼミに入ることができて、最初にお話ししたようなテーマで研究を続けています。江戸文学をテーマとしているゼミなので、妖怪そのものの研究だけではないのですが、江戸時代には妖怪に関する絵巻物や出版物が数多く生み出されているので、新しい視点で妖怪について考えることができます。江戸文学の魅力を探っていく講義や時代考察のための資料を集めていく作業は、何となく鬼太郎のアニメを時代ごとに追っていた、あの頃の自分とリンクするような気がします。

大学では漫画部に所属しているとか。

絵を描くのも漫画を読むのも小さい頃から好きだったんです。親に聞くと4歳頃からずっと絵を描いていたとか。私の記憶があるところでは、小学生の時には自由帳にコマ割りを作っては、そこに絵を入れて漫画のようなものを描いていました。自分が読んだ漫画をお手本に、見よう見まねで描いていただけなんですけれど。中学校では美術部、高校では漫画研究部で、同じ趣味をもつ仲間と一緒にマイペースにイラストを描いていました。だから、大学でも描くことを続けたいなと思っていたんです。大学の漫画部は、雰囲気も良くて、自由に創作活動できる環境が自分に合っていました。

自宅の本棚

大学生になってから創作に変化はありましたか?

自己流でも描いているうちに絵はうまくなるもの。子どものころは、好きだった少年向けアニメに影響を受けた日本的な絵を描いていましたが、大学に入ってからはディズニーや海外アニメも観るようになり、特にティム・バートンの「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のキャラクターデザインに影響を受けて、絵のタッチが少し海外風に変わりました。今のタッチが気に入っているし、評判もいいので、この方向性でもっといろいろ描いてみたいなと思っています。絵は趣味で描いているので、プロになろうとは思っていませんが、福島先生は、私の描く絵を面白いと評価してくださいますね。

今、小説の執筆にも力を入れているんですよね。

読書も好きで、いろんな本を読んでいるうちに、小説を書きたくなって、絵と同じくずっと独学で書いていました。大学生になってはじめて、プロの作家でもある西田俊也先生の創作の授業で自分が書いたものを読んでいただける機会があり、第三者の、しかもプロの方の感想や指摘をいただけたんです。その時、これまで書いてきたものは自己満足だったなと気付かされました。今は、福島先生のゼミとは別に、西田先生のゼミにも聴講生として参加していて、先生の指導を受けながら、文章を書いています。先生の講義で、小説について知れば知るほど、文章を組み立てるのは難しいと感じます。私が書きたいと思っているファンタジーの物語は、特に技術がいるんです。現実の世界ではないからこそ、しっかりと設定などを作り上げないとすべて嘘になってしまいます。今はまず、文章力を鍛えるために身近な題材の書きやすいテーマを選んで、エッセイをたくさん書くようにしています。自己流で書き続けていたら、きっと自己満足で終わってしまっていたと思います。こうして創作を学ぶチャンスがあったからこそ、どうやったら伝わる文章になるのかということを考えることができたし、客観的に誰かに読んでもらって指摘や感想をもらうことで、創作活動の大きな糧になりました。

将来はどういった道に進もうと考えていますか?

まだはっきりと決めていませんが、どういった仕事に就いても絵を描くことと小説を書くことをやめるつもりはありません。妖怪もそうですが、絵も小説も漫画も、私はファンタジックでユーモアがあるものが好きなようです。よく考えると、一番最初に大好きになって何度もくり返し読んだ絵本も「かしこいポリーとまぬけなおおかみ」という童話で、女の子を食べようとするオオカミがことごとく失敗する「赤ずきんちゃん」のパロディみたいなストーリーでした。

現実ではそんなに上手くいかないし、ありえない話だけれど、フィクションの物語だから成立する。そんなファンタジーの素敵な世界から、私は元気や勇気をもらっているのだと思います。大学4年間で好きな世界を追求し続けてきたのは、私の強み。今後の人生の大きな財産になると思います。いつの日か、人に元気や勇気を与える物語を完成させたいですね。