ぱすてる通信 vol.6 (1998.3発行)
  1. イラムティーをどうぞ   横山秀世


  2. 高野山町石道  川上久子




イラムティーをどうぞ   横山秀世

 「紅茶といえば、どこの国を連想しますか」と言う質問にあなたならどう答えますか。「イギリス」と言う答えが多いのではないでしょうか。「インド」と答えた方は何人いらっしゃるでしょうか。世界的に最も有名な紅茶産地は実はインドとスリランカで、生産量はこれらの国が世界で1位、2位なのです。
 紅茶は数年前から日本でも一種のブームになっています。コーヒーの注文と同じように、紅茶も茶葉の名前を指定して注文できる喫茶店が増えてきました。
 30年以上も前のことですが、ミナミのある洒落た喫茶店で「紅茶」と注文すると、「どれになさいますか」と尋ね返され、何種類かあった紅茶のメニューの中から「オレンジペコ」を選んだことを思い出します。当時、たいていの喫茶店では「紅茶」と注文すれば、それで十分でした。紅茶の知識もなく懐具合もさびしかったので、一番安い値段の「オレンジペコ」を注文したのを今も覚えています。
 ここ数年の紅茶ブームにあやかろうと、数十種類もの紅茶を用意する喫茶店さえ現れました。もう「オレンジペコ」とメニューに載せるような喫茶店はないかもしれません。ご存知のように、葉の部位によるグレードをあらわす名称の一つが「オレンジペコ」です。「オレンジペコ」を茶葉の銘柄と素朴に思い込んでいた時代が懐かしく思い出されます。
 ものの本によるとこのグレード分けは味の良し悪しを決めるものではなく、茶葉のサイズに応じて蒸らし時間を変えるために用いられるものだそうです。最も先端部の新芽のところ(チップ)をFOP(Flowery Orange Pekoe)と呼び、このチップが多いほど上質とされています。
 さて、話をインドに戻すと、紅茶の中でも名門中の名門はいうまでもなく「ダージリン」です。インドのダージリン地方(ヒマラヤ山岳地帯)で栽培され、マスカットフレーバーと評されるさわやかな芳香が特徴で、FOPグレードのダージリンは「紅茶のシャンパン」とも呼ばれています。
 このダージリンに接してイラムという地域がある。イラムはインドの国境の北のネパール領であり、そこで栽培されているのが「イラム」紅茶です。味、香りとも最高の紅茶だと思うのですが、残念ながら日本の紅茶専門の喫茶店でも「イラム」をサーブしてくれるところは滅多にありません。
 日本では、まだ幻のこの「イラム」を味わいたい紅茶党の方は、お申し出ください。ネパールに行くたびに忘れずに買ってくる「イラム」が出番を待っています。




高野山町石道  川上久子

 好天に恵まれた晩秋の休日。清水さんご夫婦と高野山への表参道である「町石道」に出かけた。
 高野山町石道は、弘法大師が高野山を開くため、山麓に寺務所として慈尊院を建立されたその院に大師の母を住まわせたという。慈尊院から山上の高野山まで1町おきに立ち並ぶ町石「卒塔婆」(五輪塔型の供養塔180基)は有名である。この参道は絶好のハイキングコースとなっており、全行程は7時間以上と厳しいものの弘法大師のお心にふれる道のりである。
 全行程を要約すると、山上の奥の院(1町石)⇒笠木峠(86町石)⇒慈尊院(180町石)で、いつもこの行程の半分を散策することとしているが、今回は慈尊院から厳しい急坂をたどって笠木峠に向かうコースへ出発。途中「卒塔婆」も見逃すほどの険しさも、眼下に広がる紀ノ川の光る川面が心を和ましてくれる。参道の所々に真新しいどっしりとした休憩所も出来、足場も整備されて沢山の人々の信仰を集めていることも知る。また途中、今までに目にすることのなかった滝を拝することもでき、幸せな一日でした。
 なお、今回の逆「笠木峠から慈尊院へ」のコースも見逃せない。笠木峠の朝シーンとした静けさの中、鳥のさえずりを聞き、山の香りと澄みきった空気を胸一杯吸いながら慈尊院へ、途中眼下に広がる紀ノ川のゆったり流れる川面を眺めながら、また色鮮やかな柿やみかん畑を縫うように歩を進め慈尊院に辿り着く。
 皆さんも、一度チャレンジされてはいかがでしょうか。




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