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情報組織化研究グループ月例研究会報告(2023.11)

「東京国立近代美術館アートライブラリにおける情報資源組織化について」

長名 大地氏(東京国立近代美術館)


日時:
2023年11月11日(土)14:30〜16:00
会場:
(Zoomミーティング)
発表者:
長名 大地氏(東京国立近代美術館)
テーマ:
東京国立近代美術館アートライブラリにおける情報資源組織化について
出席者:荒木のりこ(大阪大学附属図書館)、池内淳(筑波大学)、江上敏哲(国際日本文化研究センター)、北岡タマ子(人間文化研究機構)、工藤彩(久留米大学御井図書館)、友田暁子(千葉県立中央博物館)、中川裕美(東京綜合写真専門学校)、中村健(大阪公立大学)、西田紀子(国立国際美術館)、八柳サエ(横浜美術館学芸グループ(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団))、和中幹雄、他9名、長名<21名>

1. 東京国立近代美術館アートライブラリについて

東京国立近代美術館は1952年12月にビルを改装して開館した。途中で竹橋に移転しつつ、2022年には開館70周年を迎えた。1965年に図書室が設置されたが詳細は不明で、1969年の移転時に図書室は設置されなかった。ただ、資料の受入は行っており、1996年からNACSIS-CATに蔵書を登録している。その後、2002年1月にリニューアルオープンした時にアートライブラリを開室した。2003年に「蔵書検索OPAC」、2019年に「東京国立近代美術館リポジトリ」を公開した。

アートライブラリ(https://www.momat.go.jp/library)は美術館の2階に位置する、近現代美術に関する資料を所蔵する専門図書館で、誰でも無料で利用可能である。近現代美術関連の図書、展覧会のカタログ、美術雑誌等、図書約15万冊、雑誌約5,500タイトルを所蔵している。また、藤田嗣治旧蔵書をはじめ、アーカイブズ資料もそのまとまりごとに保管している。例年2,000-2,500名程度の利用があり、ILL(図書館館相互利用)サービスによる文献複写にも対応している。その他、以下の活動や情報公開を行っている。

2. 蔵書検索(OPAC)について

蔵書検索(OPAC https://kinbiopac.momat.go.jp/opac/opac_search/)では、アーカイブズ情報へのリンク、国内や国外の有用なデータベースへのリンク、新着案内等、さまざまな情報を公開している。また、「アートライブラリからのおすすめ」(「MOMATコレクション展示資料」、パスファインダー)、「研究員の本棚」のコーナーもある。

3. 情報資源組織化

年間登録冊数は例年3,000冊程度である。さまざまな情報を元に選書・購入した資料や、寄贈された資料、さらに自館刊行物を受入している。図書・展覧会カタログ・雑誌に担当を分担して書誌データを登録している。その際、「受入票」を作成して資料にはさんでいる。背の厚さによって保存方法を変えており、薄いものはファイルボックスに入れている。必要な場合は、中性紙の箱、アーカイバルクリアフォルダー、コリブリ(のりを使用しないブックカバー)等を用いて保存している。分類について、一般図書はNDCだが、7門(美術関連)の一部については、BNDCという独自分類を使用している。その他、所蔵品目録、美術館・博物館の刊行物、大学の刊行物等や、展覧会カタログ、雑誌についてもそれぞれアルファベットの分類記号を採用している。

なお、自館発行の展覧会カタログについては、目次、作家数・作品数・会期日数・会期入場者数等、細かい情報も登録している。登録された書誌データは、ALCサーチ(美術図書館連絡会の横断検索システム)、CiNii Books、国立美術館サーチでも検索することができる。

4. 作家ファイル(エフェメラ)の登録

美術館に届けられたチラシや案内はがき等のエフェメラ(一過性資料)を作家単位でフォルダに保存している。OPACでも検索が可能で、事前予約制で利用することができる。これらは作家活動を跡付ける重要な記録である。ニューヨーク近代美術館の活動を参考にしている。

5. アーカイブズの登録

東京国立近代美術館のアーカイブズ(https://www.momat.go.jp/library/archives)は独自運用をしており、 ウェブサイトと図書館システムを組み合わせて、疑似的に階層構造を表現している。 ウェブサイト上で、ISAD(G)(国際標準記録史料記述一般原則の第2版)に基づく資料群の概要を示した上で、OPACへのリンクをつけている (例:「夢土画廊関係資料」https://www.momat.go.jp/library/archives/mudo)。 OPACでは親書誌(フォンド単位)-子書誌(シリーズ単位)-巻冊次(ファイル単位)-目次(アイテム単位)という階層構造を活用して記述したデータを確認することができる。

参考文献

発表者は、東京国立近代美術館のニュースレターの連載で、館内の研究員にインタビューする「研究員の本棚」やカタログ製作の裏側を述べる「カタログトーク」の執筆等も担当している。以下、発表内容の参考文献を挙げる。

以上の発表を受けて、以下の質疑があった。

なお、今回の月例研究会については、Zoomの映像を録画し、開催後一週間に限り、出席を申し込んだものの欠席された方にも、映像を配信した。

(記録文責:荒木のりこ)