学生インタビュー

水族館の飼育員と心理学の関係

水族館の飼育員と心理学の関係

Y.Hさん

Personal Data

在籍学科

心理学科

出身高校

大阪府 金蘭会高等学校

憧れの人物

飼育員のみなさん

よく遊ぶ場所

和歌山の飲食店

おすすめの映画、テレビ番組

ほとんど観ない

好きなブランド

cepo

アルバイトの職種

飲食(パスタ屋)

1ヵ月のバイト代

3万円くらい

どんなに伝えたいと思っても、
伝えたい相手に響かなければ意味がないんです。

飼っているフクロウ

いろんな生き物を飼っているそうですね。

フクロウ、プレーリードッグ、トカゲ、リクガメ、古代魚のほか、父と海で釣ってきたマダイやカワハギなど、数えると水陸合わせて20種の生き物が家にいます。元々、父の趣味で生き物を飼っていたこともあり、私も自然と興味を持つようになって、一緒に飼育しているうちにどんどん数が増えていった感じです。幼い頃から常に生き物に囲まれて育っているので、家に生き物がいるのは当たり前の感覚です。飼いたいと思った生き物は、ひと通り家にいます。唯一飼えなかったのは、ナマケモノ。飼育がかなり難しく、泣く泣く諦めました。生き物の中でも、特に好きなのは水の生き物です。実は私、動物アレルギーがあって、ウサギやモルモットのような毛に覆われた哺乳類は体に異常が出てしまうんです。水の生き物だとアレルギーが出ません。だから、鑑賞も動物園より水族館派ですね。水族館のどこか神秘的な空間自体も好きです。

一番好きな生き物として何を選びますか?

原始的な構造をもつ肺魚で、飼っている中だと、プロトプテルス・アネクテンスとネオケラトドゥスという種類の古代魚です。恐竜っぽい名前からイメージできると思うのですが、恐竜が生きていた時代から、何万年、何億年と絶滅することなく、ほとんど姿も変えず生き残ってきた魚で、その壮大な年月にロマンを感じます。見た目はとても地味なのですが、本で調べたり、水族館の飼育員さんたちに聞いたりして、神秘的な生態を知れば知るほどカッコイイなと。強くたくましく生き抜く古代魚の魅力を、「地味だけど凄いんだぞ!」と、みんなに伝えたいと思うようになりました。

父と釣りや磯遊びへ

現在、地元の自然博物館でボランティアスタッフを しているそうですね。

和歌山県立自然博物館で、生き物の世話やイベントのお手伝い、雑用など、幅広く関わらせてもらっています。元々は、水族館に通って、飼育方法を飼育員さんに質問したりしているうちに、どんなことにも答えてくれる飼育員さんの知識量って凄いなと。その存在に憧れるようになったことがきっかけです。水族館そのものにも興味があり、魚よりも水槽の裏に隠れている濾過システムなどを観察したり、こんな場所で働けたら良いなと。いつしか、大人になったら水族館の飼育員さんになることが夢になっていました。それで、2回生の時に思い立って、お手伝いをさせて欲しいとお願いに行きました。当初は「心理学科に通っているのに何で水族館?」「どうせ続かないんじゃないの?」という感じで、ずっと断られていたんです。基本的に、どの水族館でもボランティアなんて受け入れていないことも知りました。それでも、どうしても飼育員さんのリアルな現場を知りたく、直談判の交渉がダメならと、ゼミの先生の伝手を辿ったりして、水族館側になんとかこちらの熱意を伝えることができ、お手伝いさせていただくことになりました。現在は、最低でも月3回は通っていて、みなさん快く応援してくださっています。ここでの経験は本当に勉強になりますし、現場経験も積めるし、何より他の館の学芸員さんをはじめとした人脈が作れたのは大きかったですね。ちなみに、ボランティア活動を通じて克服できたことがあります。私、昔から子どもが苦手だったんですけど、「水族館は教育施設であるべき!」なんて自分で言っているのに、子どもを避けるわけにはいかないじゃないですか。場数を踏むしかないと、子ども向けのイベントを開催する時は積極的に参加させていただきました。最初は話しかけても聞いてもらえなかったけれど、学芸員さんの話し方を参考に見よう見まねでやっていくうちに、いつの間にか子どもたちに興味を持って聞いてもらえるようになったんですよ。自分から苦手意識を克服できたことは、他のことでも同じように取り組める良い機会になったと思っています。

専門学校ではなく、なぜ大学、そして心理学を 進路選択したのですか?

進路を決める時、飼育員になるための専門学校に進むことも考えました。一方で、心理学にも興味があったので、就職を優先するか、学問を優先するか、本当に迷いました。そんな時、ふと思ったんです。水族館という場所が輝いて見えるのは、多くの人たちの思いが詰まっているからじゃないのかな?と。「展示している生き物をどう見せるのか」「どうすれば来館者に感動を与えられるのか」。それには、生き物のことだけを勉強してもダメなんじゃないかと。心理学の勉強を通じて、より人の心を理解することができれば、他の飼育員とは違う自分だけの強みになるだろうと考えたんです。結果的に、心理学を4年間学んだことは正解でした。私は生き物が好きだから水族館の飼育員になりたいのではなく、教育施設としての水族館の意義を伝える飼育員になりたかったんだということを確信できました。今どきの水族館って、どちらかというとレジャー施設のイメージが強くて、遊びに行く場所って感覚が主流になっていますよね?でも、本来は学ぶための楽しさを提供する場でもあるはずで、その学びの要素がどんどん薄れていっている危機感があります。華やかなライトアップなどで着飾るだけではなく、「教育として生き物の素晴らしさ」をもっと伝えたいんです。そのためには生き物の知識はもちろんですが、伝えたい相手の心理を掴んだ方が有利だって思っています。実は2回生になってから水産系の大学に編入する話もありましたが、この大学で最後まで心理学を学ぼうと決めました。生き物の魅力をちゃんと観る人に伝えられる理想の飼育員になるためです。卒業研究も「水族館における来館者の心理」をテーマにしました。展示している生き物のパネル解説で、どんな文字のフォントや色を使ったら人は惹きつけられるのか、興味を持ってくれるのかなどを研究したんです。伝えたいことと伝わることは違います。どんなに伝えたいと思っても、伝えたい相手に響かなければ意味がないですからね。それに、この卒業研究にあたっては、私の夢を理解してくれている先生方が親身になってサポートしてくださって、あの時編入せずにこの道を選んで良かったと思います。

卒業後は大学院に進学されるそうですね。

水族館への就職ではなく、岡山県にある大学院の生物地球科学研究科で2年間、カメの研究をします。このまま水族館に就職して、飼育員としての経験値をスキルアップさせる道も考えたのですが、一度しっかり腰を据えて生き物を学びたいなと。これまでは水族館にいる生き物を広く、浅く勉強してきましたが、個体によってそれぞれ生態が違います。大学院ではカメの研究を通じて、生態や調査方法などを深く掘り下げていきます。水族館の飼育員というのは、どの生き物を担当するかは働きはじめてから決まることが多く、どんな生き物でも深く掘り下げていけるようなスキルを身に着けたいと思っています。少し回り道かもしれませんが、きっとムダにはならないと信じています。

最終的には、水族館の飼育員をめざしますか?

大学院に進学しても、水族館で働きたい、生き物の素晴らしさを伝えたいという気持ちは一貫して変わりません。一方で、水族館の数には限りがあるので、飼育員としての就職はかなりの狭き門です。また、就職できたとしても、年齢的、体力的に長く続けるためには、ただ生き物が好きってだけでは通用しない厳しい世界だと聞きます。だからこそ、ここで心理学をちゃんと学んで、学芸員資格も取得し、次の大学院では研究者としての実績も作った上で、確固たる自分の強みを持っておきたい。私だからこその飼育員とはどんな姿なのかを追求しながら、生き物の素晴らしさをひとりでも多くの人に伝えていきたいです。