学生インタビュー
偏食家の気持ちが分かる栄養士に
食物栄養学科
大阪府立長野高等学校
母
天王寺
世界の果てまでイッテQ!
特になし
飲食(喫茶店)
7万円
家の近くに家族とよく通っていた喫茶店があって、すごく居心地がよかったんです。顔なじみにもなっていたので、高校生になってから、その店でアルバイトをすることになりました。高校時代は週2日で、大学生になってからは週3日ペースでバイトを続けています。小さな喫茶店なので、なんでもやるって感じで、接客からドリンク作りまで。アットホームな雰囲気が私の性格にぴったりで、ここで働き始めて7年目になります。接客のイロハや働くことの楽しさを一から教えていただき、私の原点のひとつとも言える場所ですね。これと掛け持ちして、現在は大学のキャンパス内にある学生食堂でアルバイトをしています。この食堂はとてもユニークで、スタッフのほとんどが食物栄養学科の在学生なんです。アルバイト先でもあるのですが、栄養士の資格取得のための実習先のひとつでもあり、私のように栄養士をめざしながら、食のアルバイトにも興味のある人にとっては、まさに一石二鳥です。ここでは、メニューや盛り付けを考えたり、下ごしらえから提供、食器洗いまで、一通りの仕事をこなします。喫茶店とは違って、こちらは大量の調理、大勢のお客さんに対応しなければならないので、それぞれにやりがいを感じています。
実は、私は偏食があって、タマネギ、ネギ、ニンジン、あとチョコレートなどの甘いものがダメなんです。少しでも入っていると分かるし、小さい頃から絶対に口にしなかったらしいんです。学内食堂のアルバイトでも、お皿によそう時にお客さんから「タマネギ抜きで」とかリクエストされると、「それ、わかるわ~」ってすごく共感できます。食関連の学科に所属していると、偏食の人はほとんどいないので、この気持ちを理解してくれる人って、なかなかいないんですよね。「好き嫌いとか言わずに、ちゃんと食べなさい!」って感じで。これまでは偏食で支障をきたしたことはなかったのですが、大学で栄養士をめざして学んでいるうちに、偏食のリスクや食と健康の関係性を知り、今後は何でも食べられるようにならないといけないと思っています。
一方で、世の中には偏食の人は存在します。また、偏食にもタイプがあって、食べず嫌いな人、食感や匂いなどの理由がある人、理由もなくただただ嫌いな人など。また、もう少し視点をずらすと、食に対して問題を抱えている人は、意外と多いんじゃないかと思うんです。飲み込むものが苦手な人、熱いものが苦手な人というふうに。さまざまな問題を抱える人に対しても、栄養バランスの良い食事をしてもらいたいと思うので、こういった点にも着目しながら大学で学んでいきたいと思っています。ちなみに、今後、私はウィークポイントを逆手にとって、「偏食の人の気持ちが分かる栄養士」をアピールしようと思っています。そのためにも、まずは私が偏食を克服しなければなりませんね。
サッカー元日本代表の内田篤人選手の存在です。中学生の頃にウッチーが好きになって、母から「栄養士の資格があったら、ウッチーに近づけるかもよ」なんて言われて、その気になってしまったんです。かねてから母は私の将来を思って、「手に職をつけたほうがいい」「何かしらの資格を持っておいたほうがいいだろう」って考えていたみたいなんです。そこに私がウッチーの名前を出したものだから、ここぞとばかりに利用されちゃって。当時、私も単純だったので、それを真に受けて栄養士になろうって決めました。高校生になって、「ん?この進路の決め方、なんか違うかも?」と一瞬迷いましたが、一度決めたことは頑として譲らない性格だから引くに引けず。なので、動機はかなり不純です。それでも、もともと母が料理上手な方で、食べることは好きだったし、そのくせ偏食で何を食べる前にも嫌いな野菜が入っていないか、じっと観察したりして、他の人より食事と向き合う時間は長い。ある意味、食にこだわりを持っているからこの道に進んだのだと、頭を切り替えたんです。残念ながら、ウッチーは大学に入学した直後に結婚してしまったので、その夢はすぐに断たれちゃったんですけどね。
堺市役所の地下に「森のキッチン」という食堂があるのですが、新メニューを考案して、実際に販売するというプロジェクトに参加しました。お題は「丼ぶり」で、決められた予算と栄養基準を満たすことが条件。一見、簡単そうに思えるのですが、実際に販売されることを想定すると、いろんな課題が思い浮かんでしまって、2ヶ月間、毎週のように試行錯誤を繰り返しました。味付けについてはそれほどハードルは高くなかったのですが、どうしても予算内に収まらないんですよ。里芋を使ったら、里芋は男性に人気がなくて売れないからダメ。だからと思って、里芋の替わりに長芋を使ってみたら、旬を外して値段が高いからダメ。トッピングに海苔を使おうとしても高いし、栄養素をクリアすると予算が合わず、予算をクリアすると今度は栄養バランスが崩れてしまうという、堂々巡りが大変でした。最終的に合格して販売したのは、お肉を鶏ミンチにしてコストダウンを図り、安価で手に入る旬の野菜・小松菜とニンジンを添えた「鶏ごぼうのヘルシーそぼろ丼」。1日20食で1週間限定販売だったのですが、結果は連日完売。とても評判がよかったと聞いた時は、苦労した分だけ嬉しさは何倍にもなった気がします。このプロジェクトでは、里芋を使って指摘されたようにターゲットを考慮しないメニューでは売れなくて意味がないし、美味しくてヘルシーというのは当たり前。その上で予算を合わせていく栄養士の仕事の大変さを、身を持って体感することができました。
今、YouTubeなどでは、一連の調理手順を1分間に早送りしてまとめる動画レシピが流行っていて、大学の広報プロジェクトの一環で私たちもこれにチャレンジしました。材料の準備から、撮影の段取りまで、入念な打ち合わせを経て、撮影当日を迎えました。編集するとたった1分の動画なのに、撮影は4時間以上。材料を入れるタイミングなどを計算しながら、工程ごとに手を止めては撮って、止めては撮っての繰り返しを30カット以上も。想定していた撮影時間を遥かにオーバーしてしまいましたが、レシピをどう見せると分かりやすいかなんて考えたこともなかったので、映像を作る側と見る側の両方の視点を学べたことは、これから調理を人に教える際には役に立つと思います。
就職活動を始めた頃は、接客をやりたい気持ちが強かったので、最後まで飲食サービス業界に就職しようか悩みました。でも、せっかく栄養士の資格を取得するのに、その資格を生かさないのはもったいないし、資格を持っていても実績がなければ、今後、自分の武器として使えないと思ったんです。結果、給食会社から内定をいただくことができ、この道に進むことを決めました。正直な気持ちとしては、まだこの選択が正しかったのか、栄養士という仕事が天職かどうかは確信が持てていません。それでも、この4年間に培ってきたこと、学んできたことには少なからず自信があります。まずは、この仕事に全力で取り組んでみて、実績を積み上げていこうと思います。飲食業は、いずれまた考えればいいかなと。思えば、中学生の頃からずっと「食」が私の生活や夢の中心にありました。これまで頑張って来られたのも、「食」のおかげ。だから、これからは少しでも「食」の世界に恩返しができたらなと思います。